幻滅デイリー Where do you go? 「楽しかったね」 道路脇では自然に、彼女の右側へ立つ。既に、これは習慣となってしまっている様だった。 「でも──わたし達は一体、何処へ行くんだろうね」 「え?」 彼女は、ぼくの指を自らの指に絡める。夕焼けが眩しい、帰り道。ぼく達は、高校生活の忙しい中でのデートの帰り。自分としては、なかなか健全だと思っている。 「何処へって、これから家に帰るんだろ? そして、ぼくは君を送るところ」 記憶喪失系の映画やドラマが流行っていたので、その真似かと溜息をついた。 「わたし達は付き合ってから、そろそろ一年になります」 「そうだな」 そして、いきなり敬語かよ。何が言いたいんだ、毎回遠回しに言って。 「一ヶ月目で、初めて手を繋ぎました」 「そうだっけ?」 「そうです」 改めて言うな、恥ずかしいから。こう見えても、狙ってそうしたのだから覚えているに決まっている。そして、六ヶ月目の事だって。まあ、ぼくが奥手なのかもしれないけど。 「六ヶ月目で、初めてキスをしました」 「……そうだっけ?」 「そうです」 そろそろ、彼女の自宅が見えてきた。しかし、彼女の意図を見極めなければ今日は帰れない。 「そろそろ、一年目になります。例えば、それから──わたし達は一体、何処へ行くの?」 敬語が止み、彼女が玄関前の門を押す。待てよ、の代わりに言う。 「行きたいところとか、ある?」 「旅行とは違うわ、軽々しく言わないで。また明日、学校で」 「……また、明日」 玄関を開ける後ろ姿を見ながら、ぼくはちょうど一年目である来週の土曜日を憂いた。 [戻][進] |