幻滅デイリー 変人ナルシスト 彼は、ナルシストでした。 「君には、一つだけ欠点がある。それは、ぼくに惚れない事だ」 「馬鹿でしょ、アンタ。わたしはアンタに惚れないし、これからも惚れるつもりは無いから。それに、ウザいのよ」 わたしは、彼を一刀両断したつもりだった。 「ははっ、今更そんな事を言って。本当は、ぼくが好きなんだろう? 見掛けによらず、恥ずかしがり屋なんだね。ほら、そんなに怖い顔をするんじゃないよ。せっかくのキュートな顔が、台なしだ。まあ、ぼくには負けるだろうけどね」 人差し指で器用に、顎を持ち上げられる。急に姿勢を変えた為に、首の筋が痛くなる。それより、その台詞を聞かされているせいか背筋が寒い。 「誰が、アンタなんか好きだって? 自惚れも、大概にしなさいよね。この、ナルシストが!」 「あっは、ぼくはナルシストじゃないよ。何故なら、ナルシストは自己愛者や自惚れの事を言うのだろう?」 彼を突き飛ばし、睨みつける。 「じゃあ、アンタは何だって言うのッ!」 「うーん、何だろうね。ぼくが恰好良いのは皆が知っているし、皆に愛されているから自惚れでも無いし……。君、ぼくを何だと思う?」 彼は、変人でした。 [戻][進] |