幻滅デイリー 撮れない写真 美人の定義があるならば、それを知りたい。 ──ジシャーッ、ジシャーッ。 「また、空の写真?」 「良いだろう、飽きない被写体なんだから」 一眼レフのカメラを構えて、シャッターを切る。無心で、撮っていく。 「それに、人間を撮るのは苦手なんだ」 「腕は良いのに」 「放っといてくれよ」 彼女の目は細いけど、黒目が大きい。髪は綺麗だけど、大して手入れはしていない。いや、綺麗だから手入れをしないのかもしれない。とにかく、あまり外見に気を遣う人では無いのだ。 「いつか、君の写真を見たいと思うよ。勿論、人間の被写体で──」 「そうか」 何が魅力的なのか、解らない。彼女は魅力的だとは思うが、美人なのかは解らない。人間の被写体は魅力的だと思うが、俺はその魅力を引き出す事は出来ないだろう。だから、俺は人間を撮りたくない。 「わたしを、撮ってみない?」 「何の誘いだよ」 「ヌードは嫌だけど」 「未だ、何も言ってないだろうが」 ポーズを取ってこちらを見るが、俺は彼女を撮りたいとは思わなかった。むしろ、そのままずっと見ていたいと思った。 「気取らないで、そのまま──」 そう、そのまま自然に笑って見せていて。 [戻][進] |