幻滅デイリー 天使の素質 「やっべ、超可愛い」 ふんわりと緩いウェーブのかかった栗色の髪、色白の肌と大きな目に長い睫毛。 「正しく、天使だな」 グラウンドが見える廊下の窓辺に頬杖をついて見ていると、クラスメイトが寄ってくる。しかし、俺は気にしない。気にするだけ、時間の無駄だから。それなら、(俺の)天使を見ていた方が断然有意義だ。しかし、独り言が漏れてしまう。 「あー、可愛いー」 「おやまあ、随分と貧困なボキャブラリィですねえ」 「心から可愛いと思える相手には、可愛いとしか言えないんだよな。なぜなら、可愛いから」 思わず、身悶えしてしまうようなファンシーさ。彼女の周りだけ、世界と空気が違うのだ。 「ああ、可愛い……」 「だけど、あの子は虫を素手で潰すぜ」 「その姿も、可憐なんだろうな」 どろりと虫の体液が、あの白く細い指先に伝う光景が目に浮かぶ。 「おまけに、動物も虐待する」 「それも良いね」 あの可愛さは、そこらには見当たらない。 「恋は盲目、か」 天使には残虐性が必要だ、という事を誰も解ってくれない。 [戻] |