幻滅デイリー 策士の資格 「策士というのは、謝らないんだよ。その代わりに、成功したらうんと威張る。そうでなければ、この商売はやっていられないさ。だから、失敗なんて目立たない。失敗は取り戻す為の、単なる布石に過ぎないのさ」 自らの乱れた着物を直して、扇を取れと小姓に命じる。 「謝れば、軍の士気も下がるしな。わたしが本気で謝るとすれば、御館様にのみだろうな」 傍の煙管を拾い上げて、縁側の方へ投げ捨てる。そして、ふと思い出した様に言う。 「そういえば、御館様は如何した」 「はっ、只今夕餉を召し上がっております。起きられたら、顔を出すように申しつけられております」 「そうか、もう夕餉時になるのか。では、御館様の元へ行くか」 重い腰を上げ、ふらりと部屋を出た。 「まあ、御館様にも謝まるつもりはないのだけれどね」 そう言って、楽しそうに策士は笑った。 [戻][進] |