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幻滅デイリー
博士と助手 Re;snow
 朝から金属音が響き渡り、近所からの苦情の電話が絶えなかった。

助手「博士、何をなさっているんですか。夕べも休まなかったみたいですし……」

博士「ああ、助手くん。おはよう、その部品をよこしてくれ」

助手「あ、はい。おはようございます、……じゃなくてッ!」

 部品と思われる薄い鉄板を渡して、ノリツッコミをする。自分でも、この体質から卒業したいとは思っている。

助手「何を作っているんですか、一体」

博士「はっはっは、よくぞ訊いてくれた! これは、雪製造機さ」

助手「雪、製造機?」

博士「ああ、町長がスキー場を作って町興しをしたいと言うのでな」

助手「でも、博士。雪製造機を作って、町にスキー場なんかが出来たら更に寒くなりますよ。博士は、寒いの嫌いじゃないですか」

 その証拠に、暖房の室温設定は常に二十六度である。俺に言わせれば、単なる贅沢だが。

博士「ふふふ、わたしを一体誰だと思っている。世紀の天才だぞ、不可能などは無い。温かい雪を作れば良いのだよ」

 再び、製造作業に入る博士。金属同士がぶつかる音は、何とも不快だった。

助手「それに、雪は溶けますよ。溶けて水になってから、氷になると風が冷たく感じます」

博士「ははは、ならば溶けない雪にすれば良いのだろう? 温かい上に、溶けないならば年中無休の営業が可能だ。しかもだ、冬の間でもバカンスじゃないか!」

助手「それに、博士は銀世界の景色が嫌いでしたよね。『何ィ?! 一色だけの世界なんて、つまらないだろうが!』と怒っていましたよね」

 博士の声帯模写をして見せると、博士は鼻息荒く機械と格闘し続けていた。

博士「ならば、七色の雪景色を見せてやるわあああッ! 首を洗って待っていろ、町長!」

助手「博士、町長を殺しちゃ駄目ですよ」



博士「出来た! 会心の出来だよ、助手くん」

助手「おめでとうございます、博士。では、早速試してみましょう」

 見れば、小さなカノン砲の様な作りだった。

博士「だから、わたしを誰だと思っている。実験は、町長の家の前をゲレンデにしてやれば良い事だ」

 相変わらず、物騒な人である。



町長「では、出来を見せてくれんかね」

博士「では、スイッチ・オーーーンッ!」

 博士が雪製造機にリモコンを向けると、機械は灰色の塊を勢いよく発射し始めた。

助手「なっ、何ですかコレは!」

 灰色の物体を手に取ると、ブヨブヨと生暖かい感触が伝わる。そして、それが町長の自宅の周りに積もっていく。

町長「キモッ!」

 人工雪を上手く避けていく町長の姿も、俺からすれば結構キモかった。

助手「温かく溶けない、七色の雪を作ろうとした結果ですね。灰色は、七色が混ざってしまった様です」

博士「ははは! 良いじゃないか、半分腐ったイメージの雪だ!」

町長「ちっとも、良くないわ! 責任持って、片付けろ! その機械も、絶対に買わん!」

 町長は、かなり怒り心頭の様だった。

博士「町長、頭頂部が禿げていたな」

助手「博士は、自重して下さい」

 その後、俺達は灰色の物体Xをかき集めて自宅に引き返した。

博士「次は、ちゃんと七色にしてみせるぞ」

助手「そういう問題では無いでしょうが!」

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あきゅろす。
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