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幻滅デイリー
哲学犯罪者
 はた、と廊下で対峙する。目を反らす事も、足を動かす事もままならない。ぼくは眉間に皺を寄せて、さぞかし苦しい顔をしているだろう。その通り、息をする事すら満足に出来なかった。
「哲学者と犯罪者は、紙一重だよ君」
すると、彼は狡猾そうに言う。腕を組み、真正面から目の中を覗き込む様にぼくを見やる彼。
「かの哲学者アウグスティヌスは若い頃、性に奔放だった。それを懺悔した結果、まあ有名にはなったけれど」
「それだけで、犯罪者呼ばわりか」
ぼくは踵を返して、彼に背を向けた。行きたい場所はその先にあったが、仕方ない。彼に関わるとろくな事が無いとも聞いた為、煩わしいが遠回りを決めた。
「それに悪行と呼ばれる事全てに興味を持ち、それを行おうとした」
「それがどうした」
「今の君だよ」
鼻の先に、人差し指を突き付けられる。ふと気付けば、擦れ違う人々がちらちらとこちらを見ては何かを囁いていた。

 ぼくは、何をしようとしていた?

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あきゅろす。
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