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幻滅デイリー
六回目の浮気
 女の武器は涙、というのは的を射た表現だと思う。

 自分で六回目の浮気をしておきながら、彼女は泣いていた。泣きたいのは、俺の方なのに。まるで、俺が泣かせているみたいじゃないか。俺はどんな誘惑にも耐え、彼女一筋に生きているというのに。俺が固いのか、もしくは俺が悪いのか。街頭アンケートを取りたいくらいだった。
「もう、良いから泣くなよ」
「ゆ、許して、くれるの……?」
涙は綺麗だと表現する人間がいるが、それは理由によってだと思う。ちなみに、一番汚い涙はエゴによって流れたものだと認識している。
「叩かないし、殴らないし、蹴らないよ。俺は浮気をされたからって、仕返す気も無いから」
こうして、彼女が罪の意識に苛まれれば良いと思う。しかし、無駄な事だとも理解している。毎回こうしているのに、彼女はいつまでたっても学習してくれない。俺は、彼女の一体どこが好きなのだろうか。浮気は、犯罪では無い。犯罪になるのは、不倫からであると聞く。
「あ、有難う……ッ」
彼女は、涙を拭った。俺には、それが嘘泣きかどうかすら解らない。もしかしたら、防衛本能からの涙なのかもしれない。ならば、女の進化は大したものである。しかし、俺は冷たく言い放った。
「だけど、許す気も無いよ」

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あきゅろす。
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