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幻滅デイリー
同級生の恋文
「あ」
カサッ、と厚めの封筒が懐から落ちた。不幸か、持ち主はそれに気付かない。その雰囲気を取るならば、札束でも入っている様な。俺はそれを拾って、彼を追い掛ける。しかし、持った瞬間に札束では無いと嫌でも気付かされた。別に、猫ばばをしようとは思わなかったが。
「落としましたよ」
なんて鈍い人なんですかね、あなたはと言いたかったが。関わるのも面倒な為に、渡して去ろうと決める。
「あ、ああ。有難う」
「いえ、気をつけて」
「あの」
去ろうとした瞬間に、呼び止められて肩を掴まれる。
「何ですか」
忌ま忌ましげに振り返ると、憂いを帯びた表情が印象的な美青年の姿があった。聞いた事がある、同じ学科に彫刻の様な驚く程に美形の男がいるという話を。
「ラブレターを貰ったんだが、どうしようかと悩んでいるんだ」
「その封筒で?」
冴えない茶封筒に、その厚さかと目を疑う。
「君、軽妙な口ぶりで有名じゃないか。どうにかしてくれないか」
「………」
そんな事で有名になるとは、と溜め息をつく。しかし、答えねば放してくれそうにもない。
「まず、俺なら読まずに棄てた。その封筒には、色気の欠片も無い。ラブレターとして、規格外。ラブレターの封筒はネグリジェも同じ、失格だ。そのラブレターを渡した女は気違いか、お前に体を抱かせる気も無い。じゃあな」

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