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幻滅デイリー
わたしの贋作師さん
 フッ、と埃の乗った皿を吹く男。
「ん……、ちょっと!」
「ハッ、贋作だ」
彼は、悪魔的にせせら笑う。それは良いけれど、埃が舞って目が痛い。
「何で、そんな事言えるんです。それ、マイセンじゃなんですか?」
「解らないだろうな、素人ちゃんは」
完璧、小馬鹿にしている顔付き。わたしだって、これでもドイツ帰り。マイセンは、幾つも見てきた。でも、今はドイツにマイセンなんか無い。
「わ、解ってます! それより、夜逃げした屋敷の家捜しなんて……」
「ふん、宝はどこに眠っているか解らないから宝なのにな」
暗い中、懐中電灯を頼りに侵入なんて人間性を疑ってしまう。
「ねえ、もう止めましょうよ……」
「怖いのか? 先に帰っても良いぞ」
額縁を外して、カンバスの裏側を見ては溜め息を吐く。
「チッ、外れだ」
「先生は、どうして本物かどうか解るんです?」
次に壷へと手を伸ばす、彼に声をかける。
「好きだからかな」
「好き、ですか……」
「まぁ、商売ってのも有るけどな。贋作を造るくらい、好きなんだよ」
確かに、彼の造る贋作は本物その物との評判。だけど、わたしは本物じゃないって知っている。

「しかし、本物より上手かったらいけないのさ」

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