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幻滅デイリー
崩壊音を聞け
 彼女は、ぼくに「泣かないで」と言った。

 バギッ。

 世界の歯車が、壊れた瞬間の音を聞いた。鈍いが、暖かい音だった。世界から、機械が無くなれば良いのにと思う。そうすれば、壊れなくて済むから。でも、壊れるのは機械だけではない。やりようによっては、人間だって容易に壊れるのだから。

 意味も無く悲しくなっては、メソメソとシクシクと泣き続けた。
「泣かないで」
そう言われる度に、ぼくはますます悲しくなって泣いた。
「泣かないで」
視界が水没するかと思うくらいに、ぼくは泣く。嬉しくて泣いた事は、生まれ落ちてから一度たりとも無い。彼女は丸まったぼくの背を、撫でていた。やがて、気が付いたかの様に言う。
「あなた、世界の歯車が壊れたわけじゃないわ。きっと、あなたの歯車が壊れただけ。だから、泣く必要は無いのよ」

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