幻滅デイリー 自傷少女と無関心男 「やだ、止めてよ。止めないで、放っといて」 「誰も止めていないじゃないか、存分にやりたまえよ。その、自傷行為とやらを」 左手首に巻かれていた包帯を解き、赤い線が引かれた位置にカッターナイフを突き付ける。 「ぼくは、止めないから大丈夫だ。うん、その程度の簡易カッターナイフなら死ぬ事も無い。ただし、痛いだけだ。まあ、実際ぼくが痛いわけでは無いし。自らのこめかみに拳銃を突き付けて、金を要求する強盗並に滑稽だな。ああ、存分に続けたまえ」 うんうんと何度か青年が頷くと、その場に少女は崩れ落ちる。 「止めなさいよ、もっと心配しなさいよ!」 「ああ、そうだね。床は汚さない様に、それからぼくと君は他人だという事を忘れぬ様に」 「ちょっと、何の心配してんのよ!」 床に座り込みながら、少女は喚く。すると、青年は全く興味なさそうに音楽雑誌のページをめくった。結局、つまらなかったのか完全に閉じてしまった。 「床」 「アンタは、一体何なのよ!」 「ぼくは、何の変哲も無い一介の青年だ」 椅子から立ち上がり、くるりと一回転して少女に見せる。 「意味解んない……」 「うん、それはぼくもだよ」 青年は、笑って言った。 [戻][進] |