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幻滅デイリー
無名の恐怖
「おい、お前!」
「何ですか」
ぼくは呼び止められて、振り向く。呼び止められる理由くらいは、ぼく自身理解している。何も、そこまで落ちぶれて馬鹿では無い。
「授業始業のチャイムは鳴ったはずだが」
「解っていますよ。ぼくは、難聴ではありませんからね」
お前と呼び、命令口調の先公がと一人静かに毒づく。
「解っているなら、さっさと自分の教室に戻らんか! 所属クラスと、名前を言え!」
キーン、と耳鳴りがする程に怒鳴る体育教師。噂では中学生である女生徒に手を出し、持ち物検査で女生徒のリップやらヘアブラシやらを取り上げて使ったりと、マイナス要素が絶えない男だ。同じ男として、情けないと思う。ああ、さすが教師様。いや、反面教師様と御呼びすべきかと苦笑する。すると、グイと自毛である茶髪を引っ張られた。
「こんな色に染めて、親に恥ずかしいと思わんのか! 校則違反の上に、女々しいな! まあ、お前の様な女面にはピッタリだろうがな」
ああ、掃きだめ中学と呼ばれたる所以か。校内暴力なんて、この学校では悲しい事に日常茶飯事なのだ。ぼくが教師になったなら、絶対にこの男の様にはなりたくないと思った。多分、なろうとしてもなれないだろうと思うが。
「これは、自毛です。それから、ぼくは二年Fクラスの前川進です。ぼくの勘違いでなければ、あなたが担任です。ちなみに、ぼくはこれから早退するので親が迎えに来ます。手を放して下さい、いい加減にしないと教育委員会に訴えますよ」

 ぼくは一刻も早く卒業式を迎えたいと、誰よりも強く願った人物では無いかと思われる。

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