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幻滅デイリー
王子様は浮気性
「王子様は、きっと魔王だったのね」
五歳になったばかりの娘は、ベッドで確かにそう言った。ぼくは黙って、『白雪姫』と『眠り姫』の絵本を片付ける。そして、彼女の隣に寝転がって毛布を整えてやる。
「どうして、王子様は魔王だと思うんだい?」
隣の家の健介くんを娘の麻理は、ついこの間まで「わたしの王子様」と言っていたのに。いや、それは関係無かったか。
「だって、王子様は魔女に飽きたからお姫様に手を出したのよ」
「なるほど」
彼女は王子と魔女とお姫様が、三角関係と言いたいのかもしれない。ただし、ぼくにはそんな事を口に出して言える勇気も無い。妻に怒鳴られるのも、しばらく勘弁だ。
「可哀相なのは、魔女なの」
「そういった考えも出来るね」
「パパは、わたしをお姫様と言ったわ」
「そうだね」
世の父親は恐らく皆、娘に弱いと思う。まあ、ぼくも娘には弱いのだが。とにかく、娘をお姫様の様に思うのは否定出来ないだろう。
「パパ、ママを捨てちゃ嫌よ」
「捨てないさ、ぼくのお姫様」
淡い栗色の髪を撫でて、ぼくは彼女に「もう、お休み」とだけ言った。

 子供は恐ろしいと誰かは言ったが、幼い娘は特に恐ろしいとぼくは密やかに思うわけだ。

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