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幻滅デイリー
燕や、燕
「燕、って君の事?」
眼光の鋭い、まだティーンエイジャーの綺麗な少年だった。
「そうだけど」
「ふーん。確かに、騙せそうな面してんな」
グイ、と無理に上を向かせる。少年は大して抵抗もせず、流れる様な仕草で自然に挑発する。
「お兄さん、一体何の用さ。燕ってのは残虐だからね、無闇に手を出せば後悔するよ」
「へぇ」
可愛さの欠片もない、クソガキめ。
「燕って、つまり若いヒモ男の事だろ」
「違うね。時と状況により、同族殺しも厭わない奴の事を言うのさ。お兄さんも、勉強不足だね。そんなんだから、女にも逃げられる」
拳を、更に強く握り締める。そう、この少年の言う事はドンピシャ。
「お兄さん、あのね。燕と雀は昔々、それは仲の良い姉妹だった。それが二羽の母親の危篤で虫を食うか、米を食うかと神様によって決められてしまうんだ。バカみたい、虫を食って同族を殺すのが燕なのさ」
「は?」
こんなに淡々と話しても良いのか、たかが十代の少年が。
「燕は子育てで片親が亡くなった雛を、巣から落として殺す。俺は、番の片割れを殺すのさ」
そう言って、少年は無邪気に笑っていた。それでいて、残酷な笑みを湛えて。

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あきゅろす。
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