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幻滅デイリー
機転姫のはなし
 わたしは、よく知らない人に声を掛けられる。それは昔からで、今も変わらない事。幸い騙された事は無いが、相手を撹乱させるだけで手一杯。向こうから話掛けて来たくせに、最終的にはわたしを変な目で見るのは許せない。そのくせに、最初から逃げようとすると進行方向までも遮ってくる。

「寒い……」
はあ、と掌に息を吹き掛ける。イルミネーションに照らされ、吐く息が白く見えた。すると、でっぷりと太った男が近寄ってくる。
「オジサンが何でも買ってあげよう、その代わり……」
よりによって、クリスマスシーズンに女子高生をたぶらかそうとするなんてと幻滅する。
「体目当て? それよりも、何か他に?」
「話が早いねえ」
脂ぎった、禿げたオヤジだった。オジサンなんて、可愛いものじゃない。金に任せた反吐の出る様な、汚いオヤジ。自らの年齢も考えず、声を掛けてくるなんて。
「何でも、買ってくれるのよね」
「勿論」
もう、わたしが自分の物になった様な顔をして。苛々する。
「じゃあ、仏の御石の鉢、火鼠の裘、燕の子安貝、龍の首の珠、蓬莱の玉の枝を買って頂戴」
わたしは、極力笑顔で言い放った。すると、変な物でも見るかの様に離れていった。
「ふん、馬鹿ね」

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あきゅろす。
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