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幻滅デイリー
ト・ライバル
 会いたくないと思っている相手には、思いがけなくバッタリ出くわすものである。
「ねー、何で俺のこと避けンの?」
「……そりゃあ、避けますよ」
じと目で、先輩と逆側に逃げていく。学校の廊下なので大して避ける事は出来ないが、近くにいるよりは幾分かマシだ。
「ほら、俺らって何て言うか同志じゃん」
「同志っていうか、敵ですよ」



 ぼくも先輩も、同じ人が好きなのだ。という事は、恋敵といった方が正しい。だが、先輩は少し変で何故かぼくにちょっかいを出して来るのだ。この間は、彼女に見せた演劇の台本(彼女もぼくも先輩も、演劇部員である)に首を突っ込んできた。彼女がいる時ならば威嚇と見る事も出来るだろうが、ぼくが一人で台本の推敲をしている際に首を突っ込んできたのである。



「そういや、先輩。顔、……少し腫れていませんか?」
僅かだが、確かに赤く腫れている。
「うん、キスしようとしたら殴られた」
「なッ?! 一体何してるんですか、アンタ!」
「だってさー、あまりにも無防備だったから」
全く悪気のかけらも感じられない言い方に、イラッとした。
「無防備だったら、何でもしていいと言うんですか!」
「何て言うの、男なら理性くらい捨てた方が良いと思うんだー」
「馬鹿ですか!」
噛み付かんばかりに言うと、先輩の携帯電話がけたたましく鳴る。それを見ると、踵を返して走り出した。引き留めようとすると、先輩は向こうを向いたままで手を振っていた。
「またね、寛貴! 今度は、彼女のスリーサイズの当てっこしよう!」
あの人は、恋敵やライバルなんてものじゃない。ただの、変な人だ。

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