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幻滅デイリー
方向音痴に愛の手を
 くるくるくるくる、と地図を回転させる白く細い手。思わず、その手を掴んでしまった。何も言う事も見付からなかったので、取り敢えず思い付いた事を言う。
「地図を回転させながら見る人は、方向音痴らしいね」
ああ、本当は「地図が見えなくて、ウザいから回すなよ」と言いたかったのに。じっと彼女がぼくを見ているものだから、つい思わず見返してしまう。もう、かれこれ迷って二時間になる。



 やがて、彼女はにっこりと笑った。
「世界はね、わたしを中心にして回っているんだから」
そう言って、柔らかい手で地図をくるくると回した。
「これで良いのよ」
ぼくは、ゾクッとした。薬もやってないくせに、こんな事を素で言えるとは本当にヤバい女だと実感した。



 山の中、彼らが救助されるまで後三時間。

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