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幻滅デイリー
回って、食物連鎖
「そう、兄は馬鹿だと思うんです」
カーテンが静かに揺れる薄暗がりの中、指を組んだままで少年は話す。
「それは、君の実のお兄さんなのですか」
「ええ、そうです」
パチンコ店の換金窓口を想起させる様な、簡素でいて向こうが見えない様に細工されている。少年は意味がある行為なのだろうか、と自分にすら疑念を抱いていた。
「なぜ、馬鹿だと思ったのですか」
しかし、落ち着き払ったその声を聞くと、少年は確かに安心する物を感じていた。教会の懺悔室ともまた違った、その不思議な空間で。
「兄は言います。『全部与えよう、そして享受しよう。それが、人間らしいというものだ』と。しかし、ぼくは違うと思うのです」
「そうですか。人それぞれ、考え方は異なりますしね」
淡々とした教本通りの解答ではあるが、悩む人間にとってはその解答で十分なのだ。なぜなら、他人に打ち明ける時点で、その人物は解答が解っているからだ。ただ、背中を押してほしいだけに過ぎない。
「ぼくは、人間は人間を食い物にしているとしか考えられません。例えばですが、虫は鳥に食べられます。鳥は人間に食べられます。しかし、ぼくには到底そこで終わるとは考えられません。このままでは、兄は他人に食われるだけの存在になってしまいます」
「と、君はおっしゃいましたが。その兄を一番の食い物にしているのは、君ではありませんか」
しばらくすると、少年は肩を震わせながら部屋を後にした。



「そして、彼を食い物にしたのは……わたし。世の中、上手く出来ていますよ本当に。ああ、あと数話で本になりそうですね」
そう言って、喪服姿の青年は万年筆にキャップを被せた。
「全部、疑いましょう。しかし、受け止めましょう。そして、わたしを食い物にするのはあなたなのですから」

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あきゅろす。
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