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幻滅デイリー
悪徳医師と箱入息子
 ズズッ、とラーメンを掻き込む。それを見て、相方が小さく吹き出す。どうやら、湯気が眼鏡のレンズを曇らせ、相方の笑いを誘ったらしい。
「笑うなよ」
顔を赤くし、鼻水を垂らした相方にツッコミを入れる。寒空の下、屋台でラーメンを食えば大体、誰しもが晒す姿だ。
「いやー、しかし生き返るなー」
「死んでいたのか」
東京人の性か、大阪人の一挙一動に疑問を抱いてしまう。
「おう、もうちょいで餓死やぞ」
ふん、と丸椅子に踏ん反り返る相方。
「そういや、首吊りってどうなのお医者先生? 確か、白目が充血して、内臓とか体液みたいなのがドロッと出ちゃう、みたいな話を聞いたんだけど」
「そら、筋肉がダランと弛緩するから、そういった事もあるわな。けど、えっぐいな自分。あくまでも、食事中やん」
「いや、すまんすまん。でも、続けるよ」
俺が相方と唯一似ているところは、この様に悪気というものを少しも感じずに謝ることらしい。
「ほな、謝るなや」
「水死は、どう思う」
「俺は、したないわ。自分の意志やったら、ごっつ凄いで。まあ、ほんまに死ぬ気いのある奴は、洗面器一杯の水で窒息死も出来る言うし」
「高校生の頃だけど、一回だけ水死体を見たことがあるんだ。高校近くのダムに引っ掛かって、浮いたり沈んだりを不気味に繰り返していた。そういや、ただの死体なのに何で不気味に感じるんだろうな」
瞼の裏に、まざまざと映る記憶。今でも思い出すが、ちょうど梅雨だったせいもあってかなりの腐臭が漂っていた。
「まあ、何倍も膨れ上がるのは勘弁っちゅう話やな。えらい、醜なるらしいし。おまけに、夏場の浴槽なら最悪やぞ。ぐっちゃぐちゃのスプラッタやん!」
「じゃ、睡眠薬の多量摂取かなあ……」
「ハア?! 睡眠薬はそのまま死んだったらええけど、死ねなかった場合は障害になることもあんねんで」
どうやら、どれも賛同は得られないらしい。しかし、痛いのも汚すのも高いのも遠慮したい俺としては一番無難な線だったのにとため息をつく。すると、相方は静かに言った。





「なあ、自分死にたいんか?」

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あきゅろす。
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