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幻滅デイリー
許婚の女
「そうだな……。興味無い、が一番しっくりくるな」
けだるそうに机に腰掛けたまま、彼は答えた。俺は思わず、詰め寄ってしまう。
「まさか、アレか! お前、女は愛せないとかいうアレか!」
「アレアレ、言うな。俺は断然、男より女の方が良い」
質問は、「気になる女はいるか?」だった。

「じゃあ、何で興味無いんだよ。お前、何かおかしいぞ。色々、恵まれてんのに」
顔、頭、家柄において全てパーフェクト。言う事は無い様な男に、俺はどうでもいい様な事を並べる。
「いや、許婚いるし」
「は?」
っていうか、今は平成だろ。許婚って、室町とか江戸とか明治とか大正とか何か解らないけど、すっげ古い制度だった様な気がする。
「だから、許婚」
「何度も繰り返し言わなくたって、解る!」
「ああ、そうか」
なんて、マイペースな奴なのだろう。なぜか、強烈に頭が痛くなった。
「……で、その子は可愛いのかよ」
「並だな」
「いつから、その……許婚がいたんだよ」
「物心ついた頃には、既にいたな」
「互いに、何て呼び合ってんだ?」
「未だ、会話をした事は無い」
俺の質問にも、恥じる様子無くすらすらと答えていく。全く、こちらの方が恥ずかしくなる。恐らく、彼は何も考えていないのでは無かろうか。

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