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幻滅デイリー
戦国剣道
「まさか、戦国時代でもあるまいし」
彼は、クスクスと可笑しそうに笑った。剣道着に着替え、垂れと胴を付ける。そして、頭に手拭いを巻き、面を付ける。最後に篭手を付けて、竹刀を片手に立ち上がる。
「いや、俺らは絶対一角の武将だったと思うね。保証する」
「何のだよ」
互いに、竹刀を中段に構える。
「始めッ!」
後輩が手を挙げて、合図をする。
「らあァァアァッ!」
俺が飛び掛かる様に攻めると、一振り一振りを彼は受け流していく。



「簡単に、瞼を閉じるなよ」
「ここまで来たなら、殺せばいい」
雨の中、大木にもたれ掛かりグッタリとする彼に歯痒さを覚える。
「この首を、お前にやるから……」
瞼を閉じたまま、喉元を指差して誘う。
「うわァアアアッ!」
刀を彼の喉元に当てて、そのまま力任せに押し切る。ごとん、と兜付きの重い首が落ちた。



「面有り!」
後輩の判定に、ハッとする。気付くと、彼は倒れていた。
「ちょっとは……、手加減しろよ……馬鹿」
軽目の脳震盪を起こしたらしく、動かすなと周りから声が聞こえた。俺はなぜかいたたまれなくなり、彼の傍で小さく囁いた。
「俺は、お前の首を取ったぞ」
「ハッ……、夢でも見たか?」

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