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幻滅デイリー
コール・コール・ミー
 苛々した。かけては切り、かけては切りを繰り返す。しかし、その行為は無駄だった。

 相手が気付かなきゃ、それは意味が無い行為。相手が気にしなきゃ、それは意味が無い行為。

 嗚呼、なぜ今日に限って別々の行動なのかと何度目かの歯軋りをする。奥歯がズキン、と痛んだが止められない。
「何でだよ、あんにゃろう……ッ!」
だから、メールの使える携帯電話にしろって何度も口を酸っぱくして言ったのに。だけど、根本的に用があるのは俺の方。基本的に、電話をかける側に用がある。受け取る方には、用事など無いのに。相手は、そんな典型だった。最初は、携帯電話を持つ事も渋った奴なのだ。
「電源か……? それとも、圏外か……?」
電源ならば、絶望的だ。電源が入れられるまで、彼は気付く事がないのだから。以前は、なぜか帰宅してから電源を入れた事もあった。出掛けるからこそ、携帯電話が必要なのだろうが。理屈を理解しろ、と怒鳴ってやりたい。自宅には、電話線からきっちり繋いである電話があるだろう。

 俺は携帯電話を握る手に、願をかけながらグッと力を込めた。
「頼むから、気付いてくれよ……ッ!」
そして、数十回目になる彼の番号を連打した。

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あきゅろす。
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