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幻滅デイリー
第三の選択肢
 俺は、アタッシュケースを玄関に置く。なぜなら、家内が受け取ろうともせず腕を組み、仁王立ちをしていたからだ。
「だから、接待だったんだって」
「じゃあ、何で電話の一本もくれないのよ!」
ヒステリックに叫ぶ家内に、ため息が出る。彼女だったら、こんな事を言わないのに。黙って、俺の帰りを待っていてくれただろうに。
「それは、上司がいたから……」
「言い訳しないで!」
はあ、とため息をついてスーツの上着を脱ぎ、ハンガーにかける。
「……………」
「何か、言ったらどうなのよ!」
さっきは、言い訳するなとか言ってなかったか。今度は、何か言ったらどうだって? 全く、笑わせる。だから、女という生き物は。
「だから、事務作業が終わってからすぐに接待に向かったんだよ。お前、解るか今は師走だぞ」
今年の総決算だって、部下が取り損ねた契約だって済ませなきゃならないっていうのに。
「それに」
続けようとすると、言い切らないうちにまたもや叫ばれる。
「男なら、何もグダグダ言わずに土下座の一つでもしてみなさいよ!」
「もう、うんざりなんだよ!」
パンッ、と乾いた音が響く。家内に手を上げたのは、これが、初めての事だった。
「出てけよ」

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あきゅろす。
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