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幻滅デイリー
彼を追って
 彼からは、性的な臭いが全くしなかった。かといって、彼は「もう、汚い事なんか見切っちゃってんだよね大体。体も、綺麗じゃないしね」と笑いながら言っていた。周りに人はいないし、浮いた話も聞かない。



「ねえ、いつまでついて来るのさ」
あちらを向いたまま、電柱の後ろに隠れた俺に訊く。体を貫く様に、冷たい声だった。仕方なく、俺はすごすごと彼の前に姿を現わす。
「何だ、君だったの。言ってくれれば、良かったのに」
「尾行なのに、声かける馬鹿はいないだろ」
「それにしては、校門から気配凄かったよ」
彼と俺の影が並んで、進んでいく。
「ぼくの事を知れば、君は幻滅する。ぼくと距離を置くだろうし、消えるかもしれない」
「消えるわけないだろ、何言ってんだよ」
「残念ながら、皆そう言った」
驚いて、口を塞ぐ。
「頼むから、君は真っすぐ帰ってくれ。お願いだから、ぼくを暴かないでくれ」
彼は、悲しそうに言う。それが、なぜか艶を帯びている様に見えた。
「お前、ドーテー?」
その雰囲気に耐え切れなくなり、思わず口を吐いて出る。彼は呆然としてから、小さく「もう、違うよ」と言った。それから、「そう見える?」と首を傾げた。ああ、なんて馬鹿な質問をしたのだろうと後悔する。彼は、静かに「やっぱり、君は面白いよ」と言った。そして、「だから、尚更失いたくないんだ」と。
「お、おい……ッ!」
「バイバイ、またね」
そう言って、彼は繁華街へ駆けて行った。



 塾帰りにソープの入口で彼を見付けたのは、その日の夜だった。

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あきゅろす。
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