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幻滅デイリー
蔓延たる停滞
 嗚呼、まただと思う。瞼を開けても、変わらない世界。ぼんやりと、うっすらと映る。エンドロールには、ぼくも君もいない。どこへ向かえば良いのだろう、鳥が鳴く方へ。

 目覚めれば、四時だった。いや、朝方じゃなくて夕方の。体内時計は、日本時間と強烈なる時差があります。ぼくは、何もしていません。

 だって、起きていたってそこには何も無いと同じ事。確実に、確実にそいつは毎日近付いて呟いては笑う。
「さあ、君の目は見えなくなるよ。日毎に、段々見えなくなるよ」
「自分の目は、鏡を使わなきゃ見えるわけがないだろ」
「見えなくなるよ、見えなくなるよ。もう、何も見なくて良いんだよ」

 昔々、忍者が盲人に変装する際には魚の鱗をコンタクトレンズの様に黒目へと被せていたという話を聞いた事がある。
「あ、れ……?」
書いた字が見えずに、瞼を擦る。じわりと、滲んだ様に書いたそばから掠れゆく。

 ぼくの兄は、視力を失った悲しみから自殺をした。見える恐怖と、見えない恐怖。ぼくは、病院の一室の窓から落ちる兄を見て「良かったね」と口を動かした。すると、兄はこちらを見て(いる様な気がしただけかもしれない)「ああ」と言った(様な気がした)。

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