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幻滅デイリー
奇妙運送365
 俺が個人運送で働き始めて、一年。ようやく仕事にも、人間関係にも馴れ始めた頃だった。
「午後達、行ってきますね」
「おー、気ィ付けて」
「はいッス!」
トラックに乗って、配達先を確認する。よし、いつも通りのルートだ。ウチは事務と配達は分かれていて、俺は配達の担当なのだ。しかし、事務の人間が優秀過ぎてルートまで決めてくれている。まあ、俺が交通に疎いところがあるからだろうけど。



「よっし、ラスト一軒だ……な?!」
見覚えのあるアパートの住所と番地、見覚えのある地図、見覚えのある電話番号。いや、普通なら毎度! くらいの勢いだが。ここは。

 インターフォンを、人差し指の先で押す。

 ピンポー……ン。

 出ない。

 ピンポー……ン。

 いや、出るはずが無いんだ。俺は、知っているんだから。

 ピンポー……ン。

 山本というプレートが部屋のドアに貼られている事が、まさに気色悪いじゃないか。悪戯にしたって、気分が悪い。俺は差出人の無い小包を持ったまま、ドアの前に膝を着いた。
「マジかー……」
謎の差出人から、毎月同日に小包なんて洒落にもならない。これが始まったのは、半年程前の事だけど。それにしても、部屋の主が死んだのにも関わらず送られてくるなんて悪い冗談だ。今日こそは事務担当じゃなくて、社長に言おう。この小包は、ヤバい。
「帰ろ」
すっかり、日も暮れ始めている。その時だった。持ち上げた小包から、微かにカリカリカリと力無く爪で引っ掻く音が聞こえたのは。

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あきゅろす。
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