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幻滅デイリー
素面と酒気
 高校を卒業してから、初めての同窓会だった。俺は大学二回生ながら、ワクワクして予約された飲み屋に向かった。



 会わなくなって二年と言えど、やはり思い出話に花が咲く。あの頃はああだったとか、あの時はこうだったとか話は尽きなかった。二十歳になったという事で、何杯も何杯もビールを飲んだ。やがて、隣に座っていた奴が俺に囁く様に喋った。何ていったか、確か山上だったか。アルコールが入っているせいか少しボーッとしていたが、一言でそれも吹き飛んだ。
「わたし、君が好きだったんだよね」
ギョッとして山上を見ると、何事も無かった様に烏龍茶を飲んだ。もしかして、酔っているのかとも思った。しかし、山上は隣に座っている俺が見ている限り、一滴たりともアルコール類は飲んでいない。ずっと、烏龍茶だけ飲み続けている。
「しかも、今も結構好きだったりするんだよ。森川くんの事」
「お……ッ、お前、何言ってんだよ。もしや、誰かに言わされてる?」
すると、山上はにっこりと笑って俺の手をテーブルの下で握った。柔らかくて、少し冷たい手だった。
「言わされているとしたら、森川くんにだよ」
俺はますます顔を赤くするばかりで、何も言えなかった。

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あきゅろす。
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