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幻滅デイリー
生的欲求と少年
「君は、生きる事に必死で疲れないかい?」
彼は至って、真面目な顔で言った。珍しい事だ、常にヘラヘラしている奴だと思っていたのに。見当違いか、と自嘲する。すると、彼は細い目を見開いて言った。
「そんなに、生きていたいと思うのかい? 生きていたいって、楽しい保証なんかどこにも無いのに」
「ずっと辛い、という保証だって無いだろ」
生きていたい、どんなに辛くたって。どんなに苦しくたって、死にたく無い。ただ、それだけ。誰かを蹴落としてだって、生きていたいんだ。どんなに醜い生き方だって、死ぬよりはマシだ。
「そんなに、生に執着して間抜けだと思わないのか?」
彼は、悲しそうだった。まるで、生きている事が苦痛かの様に。俺には、信じられない。死んだら何も出来ない、って意味じゃないけど。生きている喜びを、胡散臭く語るわけじゃないけれど。
「もしかして、死にたいのか?」
「何だよ、一体何なんだよ。君は、何でそうまでして生きていたい? その意欲は、どこから沸き上がってくる? 何故、死にたいと思わない? 死んでしまった方が、楽かもしれないのに!」
彼は俺を押し倒し、頭を掴んで何度も頭を床に打ち付けた。ガツン、ガツンと頭の中に鈍い音が響いた。グラグラ、と脳みそが揺れる。
「俺はさ、生きたいわけじゃないよ。ただ、死ぬのが怖いだけ。死へのモラトリアム、って感じ。前向きな考えで、生きたいってわけじゃない」
彼は涙やら鼻水やらで、随分とグチャグチャな顔をしていた。
「例えばさ、死んだらどこへ行くのか解らないじゃん? 俺の無い俺は、俺なのかなとか。怖くて怖くて、仕方ないんだ。だから、綺麗な生き方なんて出来ないけど生きていたいんだ」
手首を切る事だって怖いし、首を絞める事だって怖い。血なんか見れないし、火を見ると震えが止まらない。単なる、臆病者に過ぎないんだ。だけど、誰かを犠牲にしろというならするだろう。俺自身の為、生きる為に。

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あきゅろす。
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