[携帯モード] [URL送信]

幻滅デイリー
この、ヤブが!
「皺になるだろうから、脱いだ方が良い」
「い、痛くしないで下さいね……?」と言って、彼は上着を脱いだ。屁理屈をこねるわけでは無いが、痛くするなという事は詰まり痛くしないなら行為自体は認められたという意味かと、ふと感じた。しかし、そうも言っていられない。これは、治療なのだから。
「痛かったら、手を挙げて。舌は出さないでくれよ、切ったら大惨事だからな」
「は、はひ……」
うん、心底嫌な顔をしている。聞けば、虫歯が歯痛を起こして頭痛になるまで我慢していたというのだから。我慢強い、という事だけは認めよう。しかし、虫歯を放っておいて泣く羽目になるのは少年なのだ。

 キュイイイイイイ。

 ギュッと固く瞼を閉じて、白衣を握られる。まあ、痛みを分散させたいのだろう。好きにさせておく。

 ガガガガガガガガ。

「ん、んんーッ!」
手を挙げながら、くぐもった悲鳴を上げられる。しかし、関係の無い事。俺は、この虫歯を削るだけだ。

 ガガガガガガガガ。

「んーッ!」
「はい、後少しだから。我慢して」
挙げた手を降ろさせ、箆で舌を固定する。
「んんッ、んー!」

 ガガガガガガガガ。

「はい、おしまい。よく頑張りました」
すると、ジロリと睨まれた。おやおや、随分とお怒りらしい。
「酷いよ、手を挙げたのに!」
「何、全ては」

 金の為さ。

[戻][進]

17/30ページ


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!