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幻滅デイリー
病弱の一生
 ぼくは生れつき、とても体が弱かった。幼い頃は部屋から一歩も出してもらえなかったし、満腹になる程の量の薬を飲んでいた。そんなぼくの遊びといったら、ただ窓の外から見える景色をスケッチブックに描く事だった。

 だから、好きな人が出来たら何でもしてあげようと思ったのに。

 ぼくがいたのは、小さな貸しアパートの一室のベッドだった。
「大丈夫よ、わたしが働けば良いんだから」
「ごめん……、本当にごめん……」
咳き込みながら、彼女に言う。
「じゃあ、行ってくるから。いい子にしてて」
「……うん」
結婚したが、結婚式はしていない。妊娠している彼女に働かせるなんて、男として最低だ。

 ぼくの体は、一体何なんだ。せっかく絵かきとして生計を立て始めていたのに、と歯を食いしばる。教会からの聖母画を依頼されても、未だに下書きだけしか済ませていない。これを描いたら、依頼料として無料で結婚式を挙げさせてくれると約束したのに。誰も呼べるわけでも、誰も来てくれる立場じゃないけれども。町医者は、もう長くないと言ったけれど。

 ぼくは何も出来なかったし、悲しみだけしか与える事が出来なかったのかもしれない。結局、苦しませてしまったんだ。

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