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幻滅デイリー
首斬り刀鍛治
「戦が無くなりゃ、商売上がったりだ」
包丁を研いだり、鍋の修理をする毎日。俺の本業は刀鍛治なのに、と呟いた。

 そんな時、とある城主から介錯人をしろと達しが届いた。話を聞けば、米は農民、人を斬るなら刀鍛治という事らしい。俺は刀を作るのは好きだったが、人を斬るというのは好かなかった。何と言っても、飯がまずくなる。

 しかし、俺は介錯で失敗した事は無かった。毎度毎度と完璧に相手の首を落とし、その名声は日本全国に轟く程と人づてに聞いた。

 やがて、遊郭から達しが届いた。とある遊女からで、小指を探しているという奇怪な文だった。俺は女の死体から小指を切り取り、桐の箱に詰めて遊郭へと向かった。吉原は賑やかで、例の遊女はすぐに見付かった。
「何に使うんだ、こんな物を」
「それを、貢いでくれはった方に贈るんや」
「……はあ」
きらびやかな着物を身に纏った女は、極自然に言う。
「指切り、髪切り、入れ黒子は有名な話や。アテはもう、切る小指ものうなって」
遊女の手を見れば、左右の小指が根元から無かった。
「それから、隣の子が小指を切って欲しいんやて話なんやけど」
「構わないが……」
異常だと思うが、刀鍛治の俺には関係の無い事。
「痛ない様にな」
「保障は出来んよ」

 俺は刀鍛治から介錯人となり、死体から小指を切り取ったり、遊女の小指を切っては桐の箱に詰めていた。

 だが、俺は刀鍛治だ。

[進]

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あきゅろす。
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