幻滅デイリー
苦めの優しさ
彼は、よく言う。
「良いよ、辛くなったならおいで」
辛い、果てしなく辛いの。先が見えないくらいに、もう引き返せないくらいに。だけど、もう誰かに頼るなんてしたくないの。誰かにすがるなんて、誰かに寄り掛かるなんて。甘い優しさなら、わたしは苦い厳しさを選ぶでしょう。
逃げて逃げて逃げて、誰かに依存するなんて。
彼は、よく言う。
「大事な人なら、例え駄目になる事が解ったとしても匿ってあげたい」
けれど、それもわたしには間違いに聞こえる。獅子の子落とし、かわいい子には旅をさせよじゃないにしても。
彼は、よく言う。
「愛しい人を、望んで苦しませるなんてどうかしている」
逆境からは自力で脱出しなければ、またいつかわたしは逆境に立っている事になりかねない。
わたしは、覚悟を決めて彼に訊いた。
「わたしは、間違っていますか」
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