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幻滅デイリー
人斬り仕事人
 彼は、人を斬る仕事人だ。そして、ぼくはその仲介人。彼は依頼されれば、依頼分だけ働く。きっちりとした、機械の様な人。まるで、感情も無い様な。

「………」
しかし、仕事が無ければ喋らないし、起き上がりもしないただの人。ぼくにだって殺せそうだが、それでは食いっぱぐれてしまう。
「あの」
「……何だ」
いかにも面倒臭いな、という声色。返事は、あちらを向いたまま。
「あなたは、怒りませんよね」
「………」
意味が解らないだろう、ぼくの言った事は。ぼくは、帳簿に稼いだ額を書き付けた。今月も、上々である。しかし、問題はそこでは無い。
「あなたには、自尊心が無いのですか」
「………」
「あなたには、自尊心が無いのですか」
「………」
もう一度、ゆっくりと繰り返した。
「あなたには、自尊心が無いのですか」
ぼくにも相手にも逆らわず、機械の様にただ殺すだけ。ぼくならば、恐らく耐えられはしないだろう。自尊心を傷付けられた分だけ、相手を殺すだろう。だが、彼はそれをしない。まるで、面倒を嫌う様に。しかし、彼は静かに口を開いた。

「ただ――命を賭す時くらいは、弁えている」
やはり、あちらを向いたまま面倒臭そうに彼は呟いた。

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あきゅろす。
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