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幻滅デイリー
十三人の父親
 俺には、十三人の父親がいる。

 一人目の父親は、つまり血が繋がった本来の父親である。ちなみに、俺が物心つく前に死んでしまったので写真と母親の話でしか知らない。聞けば、俺と顔は瓜二つ。性格も、かなり似ているという。

 二人目の父親は、優しい顔立ちの男だった。よく気付き、遊んでくれる男だった。しかし、細やか過ぎる性格が禍して母親と別れた。

 三人目の父親は、厳つい男だった。トラックの運転手で、ひ弱な俺を連れ回しては母親の怒りを買っていた。

 四人目の父親は、女の様な顔立ちの男だった。仕事は売れない歌手で、夢ばかりが先走る様な変わった男だった。

 五人目の父親は、背の高い男だった。所謂、モデルというやつを生業にしている男だった。顔とスタイルだけは良かったが、当時小学生の俺でも馬鹿だと感じていた。

 六人目の父親は、何を考えているのか解らない男だった。仕事も解らなければ、年齢すら解らない男だった。しかも、いつ別れたのかも知らないのだから質が悪い。

 七人目の父親は、俺に性的暴行を加えた男だった。母親に近付いた理由も、その為だったと言った。やがて、近所の小学生に手を出してお縄になった。

 八人目の父親は、数学者だった。俺もそれを倣って、数学者になりたいと思った事もあった。だが、あまりにも家庭に興味を持たなかったせいで別れた。

 九人目の父親は、超有名企業のサラリーマンだった。しかし、騙されやすいのが珠に傷で常に多大な負債を何度も負っていた。母親はついに愛想を尽かし、別れた。

 十人目の父親は、根暗な男だった。何も喋らないし、話かけてみれば無視。まあ、そんなものかと人生に諦めを感じたのもこの頃だったか。

 十一人目の父親は、俺と同い年の男だった。さすがに「止めてくれ」とは言ったが、結婚するのは母親だ。とうとう反対しきれず、同い年の男は俺の父親になった。しかし、破局が一番早かった男でもある。理由は、俺より精神年齢が低かったからだという。

 十二人目の父親は、性転換をした元女だった。ここまでくれば、もう俺も驚かない。勝手にしてくれ、と言ったところだろうか。もう、母親が良いならば何も言わない。俺もちょうど結婚した頃だったし、特に何も感じなくなったからだ。

 十三人目の父親は、嫁の父親である。とても良い人で、さすが彼女の父親だと感じた。人間として、尊敬したい人種だと初めて思った。

 以上が、俺の十三人の父親である。

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あきゅろす。
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