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幻滅デイリー
赤石先輩と葵田先輩
 当時、ぼくにはよく面倒を見てくれる先輩達がいた。自他共に厳しい体育会系の赤石先輩と、涼しげな眼差しが印象的な葵田先輩である。

「え、進学先も一緒なんですか」
ぼくは思わず、素っ頓狂な声を上げてしまった。そして、慌ててそれを謝る。
「けど、良いですね幼なじみって」
「ああ、まあな」
赤石先輩はニッ、と笑った。しかし、それを葵田先輩が茶化す。
「こいつ、俺がいなきゃ駄目だって言うんだ。全く、恥ずかしいよ。泣いて頼むなんて、俺は出来ないね」
本当に冗談を言い合うくらい、仲が良いんだなァと思ってついつい笑ってしまった。すると、葵田先輩はそのまま話を続ける。
「一人で、トイレにも行けなかった事もあるんだぞ。おっと、これは内緒の話だ」
「は、はい……」
ちら、と赤石先輩を見ればかなり怒り心頭の様だった。そして、葵田先輩を見ながら勝ち誇った様に言う。
「ハッ、俺の便所の分際で何を言いや」
ゴスッ、と重い音が聞こえた。葵田先輩の拳が、赤石先輩の鳩尾に見事クリティカルヒットしたらしい。
「後輩の前で言うな、殺すぞ」
「ずみまぜん……、でした……」
腹を抱えて、床に沈む赤石先輩を見て恐怖を覚えた。しかし、どういう意味だろう。

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あきゅろす。
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