幻滅デイリー 寝言に返事を、 彼は、ソファで死んだ様に眠る。白雪姫も真っ青な色の白さ、灰かぶりも目を見張る睫毛の長さに、眠り姫も驚かんばかりの寝相の良さ。 「もう、寝たの?」 声をかけるが、返事は無い。だらん、と伸びた脚が床に触れるか触れないかの位置にあった。ソファが小さいんじゃない、と彼女は呟いた。 「う、ん……ッ」 何かを渇望する様に、彼は腕を伸ばす。しなやかに伸びた腕は、宙を虚しくさ迷った。 「ねえ、起きてるの」 彼女の声に反応は無く、ただただ彼は腕を伸ばしていた。しかし、何も掴む事は無い。 「う、あ……っ」 荒い呼吸、額に滲む汗、喉の奥から呻く様な声。言葉にならない、苦しそうな彼の叫び。彼女は、傍に寄って彼の手を握った。 「大丈夫よ、大丈夫。大丈夫だから」 「う、うう……っ」 浅く速い呼吸は、段々と深く遅い呼吸へと変わっていく。やがて、呻きも無くなって部屋は静かになった。 「……………」 「悪夢だったのかしら。まさか、ね」 あんなふてぶてしい人が悪夢なんかにうなされるなんて、と彼女は静かに呟いた。 翌日、彼は髪を掻き上げながら恥ずかしそうに言った。 「俺、昨晩さ……」 [戻][進] |