[携帯モード] [URL送信]

幻滅デイリー
水槽依存クライアント
「水槽内の魚の気持ち、って考えた事がありますか?」
薄暗く、水槽内だけが青白く光る。滑らかに伸びた髪と、妖しげな目が印象的な青年だった。いくら金持ちのクライアントと言えど、こんな奴と四六時中一緒にいたら此方が喰われてしまう。
「考えた事は、無いな」
腕を組んで答えると、青年は素っ気なく「そう」とだけ応えた。
「その水槽はね、ペットショップに置いてあるんですよ」
袖から伸びる白い腕。余程、外に出ていないのだろう。素足も、随分と白い。椅子に座ったまま、水槽の置いてある台に上半身を預けている。
「勿論、その水槽内の魚は鑑賞用では無いんですよ。もっと、大きな魚の餌となる為に育てられているんです」
「それも、仕方が無い事だろう? 人間だって、家畜を殺して食べる。大して、変わらない事だ」
「では、あなたは人間を食べるのですか? だって、言っている事はそういう事ですよね?」
「それは、屁理屈だ!」
「嗚呼、ぼくは耳が弱いのです。それに、魚達も驚きます。頼みます、大声を出さないで頂けますか」
お前が弱いのは、頭の間違いだろうに。何故、俺が譲歩しなければならない。青年は、苦しそうに言った。
「嗚呼、あなたも脱落です」

[戻][進]

12/28ページ


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!