幻滅デイリー
ネガポジ兄弟
ネガティブとポジティブの略だからって、特に彼らは写真好きの兄弟では無い。
「良いんだよ、どうせぼくなんて」
「悪いけどさ、俺は完璧なんだよ」
生まれた環境には大差無く、両親共に贔屓は一切無く教育したと口を揃えて言う。
渇き足りぬ笑いを漏らす兄と、潤い満ちた笑いを溢す弟と。
「ぼくが駄目人間だなんて、誰もが知っている事じゃないか。何を今更」
「俺が最高の人間だなんて、誰もが知っている事じゃないか。何を今更」
めそめそ、と嫉妬を並べる兄と。はきはき、と魅力を並べる弟と。
「生きていたくない、と何度考えたか。けれど、怖くて死ねないよ」
「死にたいと思った事なんて、一度も思った事は無いに決まってる」
「何も、する気が起きないんだ」
「今なら、何でも出来そうだよ」
冷たい床に転がったまま呟く兄と、太陽に向かって力強く叫ぶ弟。
「どうにもならないよ、人生なんて」
「いくらでも変えられるさ、人生は」
兄は常に怨恨を、弟は常に讃歌を。
マイナスはマイナスと掛けたとしても、結局はマイナスなのだというのが兄の持論である。
全ては計算なんかで割りきれる物では無い、結局は本人次第だというのが弟の持論である。
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