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幻滅デイリー
嘘、本当、嘘
 アパートの一室が、俺の自宅である。狭くて暗い、最悪の立地条件。そして、そこに男を囲っている。別に、囲いたくて囲っているわけでは無いが。「帰りたくない」と喚くわ、名前は言わないわと面倒な奴なのだ。代わりに身体で支払うだの何だのと、全く腐りきった人生である。

「俺、兎だもん。寂しいと、死んじゃうんだぞ」
「兎は、縄張り意識が強いんだ。死ぬわけないだろう、馬鹿が」
ジャケットを脱ぎ捨てた俺は、彼を一瞥する。馬鹿馬鹿しい、よく毎日飽きないものだと思う。何もせず、何も生まずと非生産的な日々を送って何が楽しいのだろう。
「兎には、水をやっちゃいけないんだ!」
「それは嘘だろう、出産後の兎には水を多く与えなければならない。不足すれば、母兎はストレスで子兎を喰い殺す。あたかも、血で喉を潤す様にな」
気付けば間違えた知識をひけらかし、子供の様にはしゃぐ。迷惑以外の、何者でも無い。しかし、個人情報は何一つ漏らさない。一体、何なんだこいつは。
「兎は鳴かない!」
「鳴くぞ、鳴かせてやろうか?」
「うう……ッ」
カッ、と顔を赤くする少年A。何だ、初めは身体で支払うとか言っていたくせに。やはり、男娼の真似なんて無理じゃないか。
「う、兎は……」
「もう、ネタ切れか? なら、一つ教えてやろうか。兎はオス同士だろうが、セックスする。性欲の塊みたいなものだからな」
「せ、セクハラ! セクハラ親父! 変態!」
わなわなと、指差した手を震わせる彼。
「何だ、せっかく教えてやったのに」
そう言って、俺は怯える彼を押し倒した。「ただし、擬似的な物だがな」と付け加えて。

 俺も、相当非生産的だなと自嘲しながら。

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あきゅろす。
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