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幻滅デイリー
造花の愛し方
 彼が事故に巻き込まれたと聞いて、見舞いに行きました。

「おう、よく来たな」
花束を抱いたまま、彼の傍に寄る。
「会いたかった」
「それは、どうかしら」
「酷くね、ソレ」
包帯を何重にも巻かれた足が、吊られていた。
「痛い?」
「折った時は痛かったけど、今は平気」
「えい」
わたしは、包帯の上から踝を目掛けて正拳突きを入れる。うん、上手く決まった。
「っだ! 何すんだよ」
「痛むのね」
「殴られれば、痛いに決まってんだろ」
喚く彼を、少し女々しいと思ったのは内緒。
「あ、そうそう。花を持ってきたの」
「話を反らしたな」
反らしたつもりは無い。抵抗出来ない体だから、殴ってやりたかっただけだし。わたしに心配させた報い、として。
「造花……?」
「そう、花屋のバイトの男の子がね言っていたのよ。最近、切り花も病院の見舞いには適さないって」
「え、何で?」
「病院内って、25℃の適温に保たれているでしょう。だから、花瓶の水から細菌が発生するのよ。勿論、花をからだって。敢えて、切り花でも良かったんだけど。その子がね、熱心に言うから」

 違う。

 造花の様に変わらず生きて、わたしを愛して下さいって言いたいのに。

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