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幻滅デイリー
独白コンプレックス
 それは、何度目かのデート前の事でした。普段からボーイッシュな恰好の彼女に、スカートを履いてくるように頼んだのです。始めは普通に似合っている、ミスマッチってこういう時に使うんだっけかとボーッと考えていました。しかし、彼女が「やっぱり、おかしい……かな? き、着替えてくるね!」と言った瞬間に何かが変わった気がしました。何と言いましょうか、今考えると場の空気だったのかもしれません。コンプレックスの魔力、とでも言ったらいいでしょうか。彼女が、酷く可愛く見えたのです。ぼくは気付くと、彼女の手を掴んで止めていました。少し、おかしいのかもしれません。彼女が気にしている、という事に可愛さを覚えたのです。たまに周囲を窺いながら、こっそりと「やっぱり、変じゃない?」耳打ちする姿は普段の彼女から想像出来ずに妙な喜びを感じていたのです。ぼくは首を左右に振って、「そんな事は無いよ」と言うのですが一向に信じようとはしませんでした。その様な姿すら愛しくなり、ぼくはぼく自身が解らなくなっていたのです。例えば、胸の大きさを気にしたりする彼女にも酷く心揺さぶられたのを思い出します。



「馬鹿だろ、お前」
「何がですか?」
「お前自体が」

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あきゅろす。
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