[携帯モード] [URL送信]

幻滅デイリー
怠惰屋家業
「って、一体何をしているんですか」
「呼吸ですけど、何か問題でも」
ごろり、と縁側に寝転がったままの時代錯誤も甚だしい着流し姿の男。言っておくが、こう見えても俺は客だ。
「呼吸って……」
「人間にとって、呼吸は大事だと思いますが」
そんな事は、訊いていない。
「あの、表の看板を見て来たんですけど」
『怠惰屋』、と達筆過ぎる程の看板。一体、誰が書いたのだろう。少し、気になった。
「はァー……、あの薄汚い看板まだあるんですかァ。驚きましたよォ」
無表情で縁側に寝転がったままの恰好を晒しながら、男は淡々と言葉を紡ぐ。丁寧に聞こえなくもないが、よく聞けば酷く人を馬鹿にした雰囲気が立ち込めている。
「で。あの、ここは何の店なんですか」
「はァ、知らずに入ったわけですか」
客が来ても寝転がったままのくせに、何なんだ一体この上から目線は。
「ここはァ、『怠惰屋』ですよォ。名前の通り、怠惰を扱っているんですねェ。どんな怠惰でも、お売りしますよォ。勿論ですがァ、お買い取りもしてますよォ」
だらだらだらだらと喋りくさりやがって、と悪態を吐く。
「んじゃ、スッゲェ怠惰売ってくれ。マジで、スッゲェの!」
「毎度、有難う御座いまァす」

[戻][進]

13/30ページ


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!