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幻滅デイリー
憎悪精製機、の人
 ぼくは、憎悪で出来ている。怨恨の呼吸をし、醜さを人に晒す。人に逢えば威嚇をし、嘘という唾を吐く。影を満たし、光を拒絶しては闇夜に目覚める。愛した人は、汚れた亡骸だった。寒い日は墓を暴き、そこに納まる。

「自分を貶めて、そんなに楽しい?」
窓の縁に腰を掛けて、彼は言う。貶めているわけじゃない、貶められているわけじゃない。元々、卑しかっただけだ。貶める事が出来る程、そんなに高明なわけでもない。
「じゃあ、何で俺の手を握っているの?」
右手は、驚く程に熱かった。離そうとしたが、今度は彼が強く握って放さない。懸命に振りほどこうとするが、無駄に終わった。
「離さないでよ、君から離さないで頼むから」
指が絡められて、そのまま側に引っ張られる。窓から、外が見えた。高くて、視界がぐにゃりと歪む。高所恐怖症では無いが、何故か落ちると思った。そして、それなら彼も道連れにしてやろうとも。彼は、その感情に気付いたのか何とも言えない笑顔を浮かべていた。
「離さないでね、俺の背を押しても良いから」

 ぼくは、憎悪で出来ている。誰かに対する憎悪では無く、きっと自分に対する凄まじい憎悪に駆られているのだ。でなければ、説明も出来ない。

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