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幻滅デイリー
さよなら、再婚
 帰宅すると、「離婚する」と父が宣言した。俺は、いわゆる大人の都合で父に引き取られた。父は母と別れた後に、すぐに若い綺麗な女と再婚した。だけど、本当の母の方が綺麗だと思う。俺は未だ、一度もお母さんと呼んだ事は無い。優しくしてくれるし、不満だって無い。だけど、呼べなかった。

 そのうち、母と月一で会う様になった。勿論、父親には秘密で。こじんまりとした、喫茶店は丁度良かった。母の日と誕生日には喜ぶ顔が見たくて、毎年プレゼントをしていた。勿論、義母にもだ。しかし、所詮子供の財力。やがて、俺は子供ながら株に手を出した。意外と向いていたらしく、勉強した分だけ成果は出た。同級生に、「お前、歳上と付き合ってんのかよ」と茶化されて相手を殴ったのを覚えている。お前なんかに、解ってたまるか。

 俺も高校生になり、母に「一緒に暮らしたい」と提案してみたが無駄だった。ある日、母は嬉しそうに話した。「お母さん、再婚するのよ」と、顔を綻ばせて。俺は仕方無く、「良かったね」と答えた。その日の帰り道に、俺は母に最後のプレゼントを買った。来月、これを渡したら二度と会わない事にしようと誓いながら。



 さよなら、母さん。

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