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幻滅デイリー
嫁入りみたいじゃん
「あ……、れ?」
ぐ、と腕を伸ばせば袖が大幅に足りない。ふと気付けば、脚もだ。
「んー……」
部室の姿見を見ながら、ジャージの袖の長さを確かめる。まぁ、入学から騙し騙し着てたけど。ふむ、と体を動かしてみるとやはり辛い。下は腰より少し低めに履いて誤魔化すとして、上は背中が痛いレベル。こんなで、体を動かすなんて無理だろ。半袖のTシャツでイケるかとも考えるが、冬場は有り得ない。
「こりゃ、買い換えるしか無いか勿体無いけど」
ジャージを脱ぐと、先輩が入ってきた。
「あ、先輩! 忘れ物ッスか?」
「応、まぁな。で、お前は?」
「や、別に大した用は無いんスけどね」
椅子に掛けてあったブレザーを取ると、そういえばと言い出す。
「何スか?」
「お前、ジャージ小さくなってただろ。俺ので良かったら、要るか?」
学校指定のジャージは、正直安くない。
「え、良いんスか?」
「俺は卒業するからな」
やべ、すっげ嬉しい。しかも、憧れの先輩から貰えるなんてツキ過ぎていて怖い。
「有難う御座います!」
部室のロッカーから出され、投げられたジャージの上下を受け取る。
「じゃあな。お前も、早く帰れよ」
ジャージの苗字刺繍を見ながら、俺は。

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