[携帯モード] [URL送信]

幻滅デイリー
どーっちだ?
「どーっちだ?」
彼女に向けて、両手を握って差し出す。



「何それ」
彼女は、クスクスと笑った。
「右手と左手、どっちに入ってる?」
「だから、何が?」
まだ、何が何なのか理解していない様。それはそうだ、何も伝えていないのだから。深呼吸をしてから、表情を無理矢理作る。
「右か左のどちらか、片手に指輪が入ってます。指輪が入っている方を選んだら、受け取って結婚する」
自分で言って、かなり寒いのは確か。だけど、言い出すタイミングが解らなかったのも確か。
「じゃあ……」
ノリの良い、そんな彼女が好きだ。ウロウロと人差し指を左右に動かしながら、悩んでいる。指の握り具合やら、大きさやらを左右比べている。
「んー……」
普段から優柔不断と豪語しているだけあり、なかなか決まらないらしい。未だに、左右の拳を交互に指差しながら、俺の顔を見て悩んでいる。



 悩むなよ、とも思ったが真剣に考える彼女に苦笑してしまう。
「外れたら、結婚してくれないの?」
悲しそうに言われても、と思う。
「さて」



 だって、両手共に指輪は入っているのだから。
「どーっちだ?」

[戻][進]

19/31ページ


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!