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御題集
消滅
 ある少年と少女の話をしようか。



 何もかもが、消えてしまえばいいと願う少年がいた。何もかもが、滅んでしまえばいいと願う少女がいた。二人は出会う事さえ無かったが、考えていた事は非常に酷似していた。

 少年は言っていた。
「嗚呼、どうしてこの星はこんなに汚くなってしまったのだろう」

 少女は言っていた。
「この星は、もう元の綺麗な土地に再生しないのでは無いかしら」

 少年は言っていた。
「解った、それなら消してしまおう」

 少女は言っていた。
「解った、それなら滅ぼしましょう」

 少年は言っていた。
「消えてしまう事が、何よりの幸福」

 少女は言っていた。
「滅んでしまう事が、何よりの恩恵」

 けれども、少年と少女が自ら手を下す事は無かった。その様な事をする前に、大人達は己れのテクノロジーで自爆してしまったのだ。

 少年と少女は、それぞれ地球という名の反対側同士でそれぞれの顔を見る事もなく微笑んだ。それはそれは、幸せに。

 少年は言っていた。
「大人達は消えた」

 少女は言っていた。
「大人達は滅んだ」

 クスクス笑って、幕を引く。さようなら。

 消滅する事こそ、道である。(了)

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