御題集 誰かの 誰かの声。誰かの声。誰かの意見。誰かの? 誰か。誰か。誰かの。 「ねぇ、買ってったら。□□くんも、△△さんも○○ちゃんも。皆、持っているんだって」 携帯電話、流行りのゲーム、流行りの服。エトセトラ、エトセトラ。 □□くん。△△さん。○○ちゃん。 それって、一体誰? 誰かの、誰の、誰の? 誰かの真似なんて、もう沢山! 嗚呼、どうせなら1番でいさせて。1番でいたいんだ。真似なんて。 父は言った。 「どうせなら、先駆者でい続けろ」 ぼくは答えた。当時のぼくは、小学生。 「一番前を走るのは、怖いよ」 「前に誰もいないからこそ、お前はお前でいられる」 ぼくは泣き続けていた。 「でも、やっぱり一番は怖いよ。怖いんだもん。だって、一人なんだよ。一人は怖いよ」 「そのうち、一人が良いと思える日が来る」 父は言い続けた。 「あんたは、一人になれないよ」 「それでも、大勢でいる事は出来ない」 「社会不適合者?」 「社会不適合者?」 「社会不適合者」 「社会不適合者」 「社会不適合者!」 「社会不適合者!」 誰かの声は止まず。 だから、いつまでも自分は手に入らない。(了) [前][次] |