白樺勘定男 ≫壱の幕 俺は修理もされていない質素な一室で、新人である部下と膝を付き合わせていた。 「貧乏なのも、わけがある」 勘定方の俺が申すのも、忍びない。しかし、これも致し方の無きこと。 「榎戸殿、そのまま続けて下され」 「ああ。この白樺城主、白樺雪様と奥方様がお亡くなりになったのは三ヶ月前の事。それまでは、事無く城は潤っておったのだ。しかし、お世継ぎ様である月夜様が城主となってからだった。月夜様には妹君の華様がおって、その姫様が有り得ん程の浪費家なのだ」 浪費家、と呟く部下の葛木。正座という姿勢を崩さず、俺の話を聞く。今時の若者としては、珍しい事である。 「何をされて、浪費されるのです。芝居、それとも賭博ですか。原因が解っているのであれば、対処出来るのではありませぬか」 「姫様の趣が、な」 少々、憚られるものがあるのだ。恐らく、葛木は躊躇無く訊くだろう。 「趣とは、一体」 すると、高い声が廊下に響いた。無論、姫の声である。 「榎戸ー、おらぬのか榎戸ー」 [*戻][進#] |